Völuspá 30

Sá hon valkyrjur
vítt of komnar,
görvar at ríða
til Goðþjóðar;
Skuld helt skildi,
en Skögul önnur,
Gunnr, Hildr, Göndul
ok Geirskögul.
Nú eru talðar
nönnur Herjans,
görvar at ríða
grund valkyrjur.

彼女はワルキリャ達を見た 広範囲より来る
行く準備はできている ゴズショザルへと。
スクルドは盾を持ち、スコグルは二番目、
グンル、ヒルドル、ゴンドゥル及びゲイルスコグル。
今数え上げた ヘリャンの修道女達、
行く準備は出来ている ワルキリャは土地に。

彼女は見た。
ワルキリャが世界の隅々より馳せ参じ、
馬を駆り神の国(ゴズショザル)へと行かんとするのを。
盾を構えたスクルドを先頭に、スコグル、グルン、
ヒルドル、ゴンドゥル、ゲイルスコグルが続いたのを。
今挙げた、兵士の神(ヘリャン)に侍るワルキリャたちが、
馬を駆り大地へ行かんとするのを。

「戦乙女」について

ノルド語には、skjaldmær スキャルドメール(盾の乙女)という表現がある、それは、単純に「盾を持っている女の人」というだけに留まらず、「女性の戦士」のことである。例えば、ウォルスンガ・サガの9節では、ヘルギ対ホズブロドディ王戦の最終局面で、skjaldmeyjaflokk(スキャルドメイヤフロクク/盾の乙女部隊)が投入される描写がある。

Þá sá þeir skjaldmeyjaflokk mikinn, svá sem í loga sæi. Þar var Sigrún konungsdóttir.

その時、人々が目にしたのは、女性兵の大軍であった。それは、まるで炎のように輝いて見えた。そこに王女シグルーンがいた。

また、24節では、シグルズルの求婚に対して、ブリンヒルドルは次のような返答をしている。

Ek em skjaldmær, ok á ek með herkonungum hjálm, ok þeim mun ek at liði verða, ok ekki er mér leitt at berjast.


私は盾の乙女であり、軍の王達の兜を身に着けている、私は彼らを助けていくつもりであるし、私を彼らと戦わせるものは何もない。

私はまず戦士であり、さらには指揮官の一人でもある。仲間の力になることはあっても、敵対することなどありえない。

さて、ここで一番の問題点は、「戦乙女」という邦訳についてである。世界的に、ワルキリャとスキャルドメールは混同される傾向にある。中でも、日本ではこの傾向が強い。一つは、「スキャルドメールがワルキリャの雅語である」という和書の説がまかり通っているからであり、それは、とりもなおさず両者に同じ「戦乙女」という訳語を与えてしまうのとブリンヒルドルの存在からであろう。例えば、ウォルスンガ・サガの邦訳では、ブリンヒルドルが「戦乙女」と表現される場合があるが、これはあくまでも「盾の乙女」の方の戦乙女である。

実際のところ、ウォルスンガ・サガには、ワルキリャはケニングも含め一人も出てこない。ワルキリャという単語は、シンフョトリの台詞の中で一度だけ出るが、それは「お前がアスガルズのワルキリャとして、~」というような敵軍をおちょくるための与太話なので、シンフョトリ自身も架空の存在としてワルキリャを語っている。宝を溜め込む竜や的中する予言を認めるファンタジックな世界観であり、現代人の目からは、それらとの区別をつけるのは容易ではないが、作中の人物達にとっては、「竜は山奥にはいるかもしれないもの」であるのに対して「ワルキリャは死ぬまで会えないもの」という具合で区別されるべき幻想なのだろう。

他方で、Sigrdrífumál(シグルドリーヴマール、シグルドリーヴァの回答、シグルドリーヴァの歌)において、Sigrdrífa(シグルドリーヴァ)は、ワルキリャであると添え書きがある。

Hon nefndist Sigrdrífa ok var valkyrja.

彼女はシグルドリーヴァという名のワルキリャであった。

そういう経緯があるので、「ニーベルングの指輪」におけるブリンヒルトは、武装しているヴァルキーレである。私は、近世以降のワルキリャに「戦乙女」という訳を当てるのは、文化的な位置づけからしてやむを得ない側面があると考えている。それと同時に、「戦乙女」は、中世に実在した(らしい)スキャルドメールを表現している的確な訳である、とも思う。どちらも訳語としては素晴らしいのだが、両者は同じものを指しているわけではないので、「戦乙女」なる日本語から何かを読み取る際には、細心の注意を払う必要があるだろう。そういう意味で、「戦乙女」は、やや不親切な単語である。

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