Völuspá 2

Ek man jötna
ár of borna,
þá er forðum mik
fædda höfðu;
níu man ek heima,
níu íviðjur,
mjötvið mæran
fyr mold neðan.

I remember yet | the giants of yore,
Who gave me bread | in the days gone by;
Nine worlds I knew, | the nine in the Tree
With mighty roots | beneath the mold.

私が思い出すのはヨトゥン族 太古に生まれ出でたものたち、
かつて彼らは 私を育んでくれた。
私が思い出すのは九つの家 九人の女、
栄えある大樹は 土の下を向く。

前節は前振りだったので、実質的には、ここが最初の物語である。前半はヨトゥン族の紹介、後半は世界の紹介。前半で、語り手の巫女がヨトゥン族に育てられた、という件は、なにがしかの比喩とも取れるが、不思議な印象を残している。後半はさらに難解だが、こちらの解釈は註を参照のこと。

ここから先は、íviði再論。

最近知ったのだが、Forspjallsljóðという怪しい詩がある。
成立は13-17世紀らしい。とにかく、そこから1節目だけ引用。

Alföður orkar,
álfar skilja,
vanir vitu,
vísa nornir,
elur íviðja,
aldir bera,
þreyja þursar,
þrá valkyrjur.

ご覧のように、一行に付き一つのグループとその特徴的な行為が挙げられている。まず、一行目のAlföður(万物の父)は無視するとして、順にアールヴ族(アールヴル)、ヴァン族(ワニル)、ノルン族(ノルニル)、íviðja(イーウィジャ)、人間族(アルディル)、巨人族(あるいは怪物族、スルサル)、戦死体を選ぶ女族(ワルキリュル)となっており、我らが「木の中の女」も、めでたくリスト入りしている。それによると、役割は「生み出す(elur)もの」ということのようだ。

Inn Hrímkalda Jötunnについて

私は、便宜上、Hrímkaldaを「氷冷」と訳すが、もちろんこんな熟語はない(と思う)ので、心の中で「霜のように冷たい」と読み替えるなり、カタカナで「リームカルダ」と読むなりして欲しい。

Óðinn kvað:

20.
“Seg þú þat it eina,
ef þitt æði dugir
ok þú, Vafþrúðnir, vitir,
hvaðan jörð of kom
eða upphiminn
fyrst, inn fróði jötunn.”

Vafþrúðnir kvað:

21.
“Ór Ymis holdi
var jörð of sköpuð,
en ór beinum björg,
himinn ór hausi
ins hrímkalda jötuns,
en ór sveita sær.”

(オージン曰く)

一つ、コレを教えてもらえないだろうか?
もし、あなたの知識が十分で、
ワヴスルーズニル、あなたが知っているのなら。
『何処から最初に地や天が来たのか』を。博識なるヨトゥンよ。

(ワヴスルーズニル曰く)

イーミルの体よりできている、
地を形成するものは。
岸壁(björg)は骨よりできている。

天は頭蓋骨よりできている、
氷冷のヨトゥンの
海(sær)は汗よりできている。

Ýmis haussがhiminnを意味するのは、スカルド詩でも出てくるので、 hausi ins hrímkalda jötunsがÝmis hausiを意味するのは確定的かと思われる。よしんば、それを知らなかったとしても、ここに出てきているくだりだけで、inn hrímkalda jötun = Ýmirは明らかだろう。つまりこの場合、「霜のヨトゥン」は、ヨトゥン全体を指す語ではなく、イーミル個人のことである。イーミルが個人名ではない可能性もあるのだが、私にはそんなに細かい筋を追い切れそうもない。

一方で、上に挙げた怪しい詩『Forspjallsljóð』には、こういうくだりがある。

Eins kemr austan
úr Elivágum
þorn af akri
þurs hrímkalda,
hveim drepr dróttir
Dáinn allar
mæran of Miðgarð
með nátt hver.

一人東方より来たる
Elivágumを越えて。
鳥(akri)の茨(þorn)。
氷冷の巨人(þurs:怪物、巨人)。
ダーイン(Dáinn)はそれらを使って人間を撃つ。
かのミズガルズルにおいて全ての。
どの夜においても。

要約すると、ダーイン氏が毎晩「茨と怪人」を使って辻斬り(?)を行うという話である。

ここで注目すべきは、þursとJötunnが同一視されていることが伺えることだ。

この詩の成立がかなり新しい(~17世紀)ことは、考慮に入れておく必要がある。Elivágumは、Vafþrúðnismál(及び、その解説)にしか出てこない地名である。そして、hrímもkaldaも共に生きている単語だが、こういう文脈で合成語hrímkaldaの用例がそんなに多いとは思わない。私の知る限り、古エッダには3回しか出てこない。この作者がVafþrúðnismálの内容をよく知ってることはほぼ確実だと考えられる。そしてhrímkaldaがストーリー的にも、音韻的にもあまり重要で無い点を考慮すると、この語は単にþursに縁がある言葉として使われているように見える。つまり、hrímkalda jötunを変換して、þurs hrímkaldaにできる程度には、同一視の度合いが進んでいることになる。この詩には、jötunnという単語は、全く使われていない(上の1節も参照)ので、詩の成立以前のいずれかの段階で「現代語」にされてしまったのだろう、と私は考える。

さて、先に述べたように古エッダでは3度でてくるhrímkaldaだが、そのうちの一つは上で紹介した。もう一つのFáfnismálでも、格以外が全く同じinn hrímkalda jötunという表現で出てくる。しかし、最後のLokasenna(ロキの口論)ではすこしだけ毛色が違う。

Skaði kvað:

49.
“Létt er þér, Loki;
mun-at-tu lengi svá
leika lausum hala,
því at þik á hjörvi
skulu ins hrímkalda magar
görnum binda goð.”

Loki kvað:

50.
“Veiztu, ef mik á hjörvi
skulu ins hrímkalda magar
görnum binda goð,
fyrstr ok efstr
var ek at fjörlagi,
þars vér á Þjaza þrifum.”


ef mik á hjörvi skulu ins hrímkalda magar görnum binda goð.

if me at sword should ins hrímkalda magar görnum bind gods,

If gods are planning to bind me to a sword with guts of “the ice-cold son”, …

もし、神々が、私を、剣(hjörr)に、氷冷の息子(inn hrímkalda mágr)の腸(garn) で、縛るつもりなら、

最後に地の文でこういう注釈がある。

Hann var bundinn með þörmum sonar síns, Vála, en Narfi, sonr hans, varð at vargi.

He was binded among gut son’s himselve’s, Váli‘s, and Narfi, son his, werde to wolf.

He was binded with guts of Vali, his own son. And Narfi, his son, became a wolf.

彼は、彼自身の息子であるワーリ(Váli)の腸(þarmr)の中で縛られ、彼の息子のナルヴィ(Narfi)は狼(vargr)になった。

解釈の一例としてだが、「ロキは禁固刑、ナルヴィは追放刑に処された」と読める(vargrと追放に関しては39節参照)。もっとも、これは為政者側の視点なので、現象を正確に記述するなら、「ロキは捕縛されたが、ナルヴィは逃げおおせた」と解釈する方が正確かもしれない。

正直なところ、ワーリをロキの息子とすべきかどうかはよく分からない。sonar sínssonr hansの違いも不明である。あるいは、ロキの子がワーリで、その子、つまりロキの孫がナルヴィかもしれない。

巫女の予言34節によると、「Váliの腸」はVáli自身の腸ではない。「Váliは長じて強力な神となり、悪人に備えて「腸の枷」を強化した」。おそらく、「腸の枷」は、日本の時代劇で言う「お縄」のようなものであるだろう。そのあたりは34節で改めて考えてもらいたい。

神話には、異聞、異説がつき物なので、地の文と詩の部分で整合が取れているとは限らない。しかし、あえて神話に合理性を求めるなら、「氷冷の息子」はワーリ(Váli)のことである。

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