Völuspá 11-13

さて、第11節から第16節までは、延々と固有名詞を並べただけで、ストーリー性もなければ、他の節との繋がりもない、という恐ろしいパートである。俗に「Dvergatal/ドウェルガタル/ドウェルグのカタログ」と呼ばれて、後世の挿入が疑われている。ただ、固有名詞自体に価値がないわけではないと思うので、カタカナ化と分かる範囲で語意を書いておく。

まず、発音についてだが、基本的に
Pronunciation of Old Norse (standard)
を日本語風に解釈した。すなわち

ところで、”v”については、同じ古ノルド語でも/w/ではなくIPAの/β/で発音を解釈する立場がある。

こういう紛らわしさを嫌って、/v/発音のままで表記する場合もある。

そもそも、古ノルド語の正書法では、”w”に相当する文字を使わず(この詩にも、一切出てこない)、/w/と発音するものは、”v”(Vend)になっているので、ここでは全てv=/w/と解釈する。しかしながら、”v”の中には/v/や/u/と発音すべきものもあるはずである。カタカナにすると、/w/と/u/はどちらも[ウ]で、ほぼ区別不可能なので、その点は良いのだが、/v/が潰れている可能性はある。そして、現代アイスランド語では、vは/v/である上に、wも/v/である。まあ、せっかく原語も併記しているので、好きなように読み替えて欲しい。

その他は、大体、基本に忠実なはずである。

10.
Móðsognir[モーズソグニル(Móð/息継ぎなしで + sognir/叫ぶもの)]
Mótsognir[モートソグニル(Mót/戦い + sognir/叫ぶもの)]

11.

Nýi, Niði,
Norðri, Suðri,
Austri, Vestri,
Alþjófr, Dvalinn,
Nár ok Náinn
Nípingr, Dáinn
Bívurr, Bávurr,
Bömburr, Nóri,
Ánn ok Ánarr,
Óinn, Mjöðvitnir.

最初の6つは月の盈欠と、東西南北である。それらを司っているのがドウェルグ族と解釈する、つまり擬人化(擬ドウェルグ化)だと考えるのが主流のようである。私は、彼ら単体の事績(例えば、歩き回ったり、何かを作ったり)がないので、人型の存在を仮定するのは安易過ぎると思うが、特に否定的な要素もないので、とりあえず納得しておくことにする。

この中のダーインは、例のDáinsleif/ダーインスレイヴの持ち主(製作者)である可能性があるドヴェルグルだと思う。版によっては、[ナール、ナーイン、ニーピングル、ダーイン]の行は存在しないので、後で誰かが後で気を利かせてリストに追加してくれたのかもしれない。余計なお世話だが。

12.

Veggr ok Gandalfr,
Vindalfr, Þorinn,
Þrár ok Þráinn,
Þekkr, Litr ok Vitr,
Nýr ok Nýráðr,
nú hefi ek dverga,
Reginn ok Ráðsviðr,
rétt of talða.

6: nú hefi ek dverga
8: rétt of talða.

今、私はドウェルグ族を きちんと数え上げた。

いくつかの版では12節の一人目はVeggrの代わりに

が入っている。

GandalfrやVindalfrのように、アールヴ族(エルフ)と付いているのは、俄かにドウェルグ族(ドワーフ)のリストとは信じがたいが、最後に数え上げ完了宣言があるので、やはり全員ドウェルグ族なのだろう(ただし、この宣言にもかかわらず、次の節でも羅列は続くので、あまり本気にしない方がいいのかもしれないが)。あるいは、ドウェルグ族は、現代的な感覚よりも、意味が広かったのだろうか。そもそも、10節の内容をよく吟味すると、人間型ではないドウェルグ族もアリのような気がする。繰り返すが、「族」は日本語にする際の便宜みたいなもので、この詩に「部族」や「民族」への言及があるわけではなく、「ドウェルグたち」の方がより正確な表現である。だから、民族・人種を超えたカテゴリとしてのドウェルグの概念(例えば「小人」とか、あるいは「人造人間」とか)があるのかもしれないし、逆にアールヴの方がより広い意味を持っていて、Gandalfrで「杖を持つ存在」程度の緩い制限しかないのかもしれない。

13.

Fíli, Kíli,
Fundinn, Náli,
Hefti, Víli,
Hannar, Svíurr,
Billingr, Brúni,
Bíldr ok Buri,
Frár, Hornbori,
Frægr ok Lóni,
Aurvangr, Jari,
Eikinskjaldi.

ところで、11~13節を見ると、最後の行が、ミョズウィトニル、ラーズスウィズル、エイキンスキャルディで、いずれも長い名前(語義も複合語)で終わっている。そういえば、現代日本人も、鼻歌で名詞を列挙する時は、無意識に「サル、ゴリラ、チンパンジー」という具合で長い名詞を後回しにする傾向があるようなので、節回しを上手くとる極意の一つかもしれない。

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